2017年、今年の一本!

今年もいよいよあと僅かになりました。
最後は、恒例「今年の1本!」で締めくくりたいと思います。

はっきり数えたワケではありませんが、件数からすると電池交換やら修理やらで年間1,600〜700本以上の時計に関わっています。
(365日毎日4本以上お預かりしていることに…)
正直その中で1本だけを選ぶのは非常に迷うところなんですが、12月の最後の最後に納めさせて頂いた時計がちょと気になったので、今年はコチラの時計をご紹介します。

 

TAG HEUER MONACO CW2113-0

タグホイヤー モナコ 自動巻きのクロノグラフです。


四角いブルーの文字盤に赤い針が大変印象的ですね。

モナコは、当時のHEUER社が世界初の自動巻きクロノグラフ、世界初の角型防水時計として1969年に発表しました。

それを名優スティーブ・マックイーンが愛用、映画「栄光のル・マン」(1971年)で右手に着用していたことで伝説となった時計なんです。

コチラの時計は、その復刻版モデルなんですね。

 

わたくし的にはこの時計の個性を際立たせているのは、なんといってもそのスクエア(正方形)のケースと文字盤ではないかと思っています。

機能的にはごく普通のクロノグラフであり、四角い時計も他にも色々ありますよね。
ですが角型時計と言えばこのモナコが真っ先に頭に浮かんでくる程スクリーンでマックイーンが着用していたイメージは強烈であり、更には2つの世界初を記録した事実も、この四角が色褪せない魅力になっていると思うからです。

 

 


裏蓋を開けると、ケースと裏蓋との密着部分に錆と汚れが見られます。
しかし防水パッキンのお陰で、ムーブメントはきれいな状態を保っています。

 


ムーブメント本体は、表側のベゼルを外して取り出します。

表側のケース&ベゼルにも錆が見られます。

そしてベゼルをとめるネジにもかなりの錆が出ています。

 


ストップウォッチのプッシュボタンも分解してみると、案の定、真っ黒です。
裏蓋のネジにも錆です。

やはり大分使い込まれたようですね。

 


洗浄機でクリーニング、錆除去を施します。

 


表側もきれいになりました。
これからオーバーホールへと進みます。

また針に曇りが見られます。
特に分針です。
ここはわたくしのこだわり部分です。

 


ブレスレットにもかなりの汚れが溜まっています。
バックルには錆が見られます。

 


そしてご指摘のあったベルトのピンが抜けてくるというのは、通常のピンとパイプによる取り付けではない割りピンが割れてしまったものでした。

以前何処かで修理をしていたようですね。

 


ところがブレスレットをクリーニングすると、他の4本も押すと抜けてきてしまいます。

ハイ、想定内です。

 


オリジナルは、パイプにピンを通しています。
しかし経年劣化で磨耗してしまったようです。

 


全部で5本、同じサイズで造ります。

オーナーさん、安上がりな割りピンタイプではなく、オリジナルと同じピン&パイプタイプにしてほしいとのこと。

好きですねぇ~、そういうこだわり。

 


ブレスレットもスッキリきれいになりました。

 


オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を閉めて完了です。

 


オーナーさんと時計のイメージがしっくりきた時、その時計がヤケにカッコよく見えることがあります。

恐らくわたくしより年上でいらっしゃる、ちょっとイタリアンなお洒落なオーナーさん。

お話しを伺っていると着用シーンが目に浮かんできて、オーナーさんのライフスタイルを想像して、あぁ、時計を使いこなしていらっしゃるなぁと思わず感心してしまいました。

ブレスレットのピンが飛び出してくるのは、バイクに乗っていらっしゃるからだとか。

バイクの振動のせいでしょうか。

もしかして2気筒? Vツイン?

ハーレーでしょうか、なんて…。

モナコを腕に着けたスティーブ・マックイーンから、バイクを駆る映画「大脱走」へとイメージが繋がっていき、その人のイメージもオーバーラップしてきます。

人生を謳歌していらっしゃる雰囲気が伝わってまいります。

明日からの出張に着けて行きたいからとのことでしたが、年末から出張だなんて、もしかして海外でしょうか?
きっと休暇も兼ねてでしょうかね。

 

と言うことで、想像ばっかりのわたくしでしたが、そろそろ一息つきたいと思います。

 

今年も一年お付き合いありがとうございました。

来年も皆様にとってより素晴らしい一年になりますように…。

 

 

 ウォッチ&ジュエリーカエラ  野口伸一

 ※新年は1月10日(水)から通常営業になります。