さあ、恒例!?になりつつあります、今年の1本!です。
わたくしが今年一年間を通して最も印象に残った時計(出会ったオーナーさん!?)を、ご紹介したいと思います。
今年に選んだのは…、
ロレックスのオイスターデイトですね。
もう4~50年以上前のモデルなんですが、日常に使うには扱い易く、必要な機能を十分に備えた時計です。
さて、時計の修理をお持ちになられる方の中には、形見の時計の修理というお客様がよくいらっしゃいます。
そしてそれは暫く使われていなかったのか、壊れてそのまましまっておいた状態であったりします。
その様な場合、特に古い時計においては修理をしたからといって完全な状態迄戻すのが、かなり厳しい場合が多々あります…。
で、コチラのオーナーさん、バックルが破損したそのロレックスを持ってこられて、使えるようになればそれだけでも良いですとのことでした。
どうやらお父様の形見の時計とのこと。
小さい頃からいつでもトラックの運転手だったお父様の腕に巻き付けられていたそのロレックスは、一際輝いて見えていた記憶があるとのこと。
風防のカレンダーレンズのふくらみが変わったかたちだなぁーと、目に焼き付いていたそうです。
お父様ご自慢の時計だったので、子供心に大切な物に違いないと思っていたそうです。
しかし、今はその記憶の中の時計だけが残されたままに…
何とかしてあげなきゃ!
裏蓋を開けてみると、中にもかなりの錆が出ています。
ムーブメントも湿気でどことなく曇っています。
そしてお決まりのような針へのダメージ。
白く曇ってしまい、夜光も劣化しています。
修理代は、果たして一体幾ら掛かるのやら…。
先ずはベゼルの修理から。
完全に割れてはいませんが、ロー付けで補強します。
これでベゼルが切れることはない筈です。
そして風防も交換です。
そして問題のバックルです。
今回の場合は修理では難しいのでバックルごと交換します。
コチラは暫く時間を頂きご用意出来ました。
刻印の記号で年代が判るらしいんですが、殆んど同じなので同モデル用ですかね。
バックルを付け替えて、洗浄機でクリーニング、錆も除去します。
オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を閉めて完了です。
ケース、裏蓋共に錆の腐食跡が幾らか残りました。
今回針は磨いただけで夜光はそのままにしてあります。
夜光も塗り替えればよりキレイにはなります。
但し文字盤の夜光の色と合わなくなってしまいます。
どちらが良いかはお好みです。
すっかりきれいになりました。
時計が甦りましたよ。
どうぞいつまでも大切にお使い下さい。
古い時計でも、クリーニングや特に仕上げをすればとても程度良く見えます。
しかし見た目が良ければ、新品同様の性能を期待したいところですが、やはり年式の古さ故に余り無茶な使い方は避け、定期的なメンテナンスを行うよう心掛けた方が無難です。
特に中古で購入する場合などは錆除去の跡が残っているくらいだと、防水性が低下している場合がありますので十分注意が必要です。
実は時計のオーナーさんは、女性の方です。
時計をお預かり後にメールでやりとりをさせて頂きましたが、お父様との想い出を伺って形見に残された物を大切に使ってもらえるなんて、わたくしもちょっと考えさせられました。
別に必要はありませんが、もし何か残しておきたいと思ったなら、永く大切に使ってもらえるものとして時計はぴったりなような気がします。
最近は時計も趣味の物になりつつあり、様々なブランドの個性的なデザインの時計が出ていますが、しかし残した後のことを思うと長く使えるちゃんとした時計を残せれば理想的なんじゃないでしょうか。
そういう1本には、時が経っても色褪せない、そんなブランドの時計を選びたいものです。
子供がいるお父さん、皆さんは形見に残せる時計はありますか?
わたくしも何か残そっかなぁ~。
(売る時計はあるんですけどね!?)
また来年もどうぞよろしくお願い致します。
ウォッチ&ジュエリー カエラ 野口伸一
※新年は1月7日(土)からの営業になります。