Cartier Roadstar ラグ加工修理

たま〜に、外科手術の必要な時計が入院してきます。
今回はカルティエ ロードスター メンズのブレスレットが取付け出来なくなってしまったので修理可能かどうか、とのご依頼です。

カルティエのロードスターは、ご自分で簡単にベルト交換が出来る優れものの時計です。
しかし、今回のオーナーさんの場合、逆にそれが仇となってしまいました。
うっかりベルトが外れて時計を落としてしまったそうです。

差し込んでもこれ以上入りません。

ケース本体から伸びたベルトを取り付ける4本の足を、ラグと言います。
その本体12時側のラグの向かって右側が、内側に曲がっています。
よく見るとラグには落とされた時のキズが付いています。
こんなにガッシリした硬いステンレスのラグでも、方向や当たりどころが悪いと曲がってしまうんです。
特に最近の時計は重たいですから尚更です。

ロードスターはバラしますとほぼ何処かしらに錆が発生していますね。

ケース、ベゼル、裏蓋、ネジを洗浄機でクリーニング、錆除去を施します。

汚れが落ちてスッキリしました。
錆もきれいに取れました。

そして修正後はこんな感じに仕上がりました。
それでも1mm弱位ですかねぇ、削ったのは。

しっかり収まりましたね。
実は今回特に注意したのがブレスレットを差し込む溝。
ラグが曲がったことでこの差し込む溝まで歪んでいました。

ココは左右対称でないと当然ブレスレットは入りません。
削る作業というのは削り過ぎたらもう元には戻せませんから、それはもう微調整、微調整の繰り返しで削っていきます。

目立った表側の錆もきれいに落ちました。

オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を閉じて完了です。

他店さんで断られ、途方に暮れていたオーナーさん、そりゃそうですよね。
こういった修理においては曲がったら元に戻せれば良いのですが、こんなにガッシリしたラグを戻すのは容易ではありませんし、下手をすると強度の弱い部分に歪みやしわ寄せがいってしまいます。
そうなると削って合わせることになる訳ですが、問題はどちらを削るかです。
ケース本体かブレスレットか。
普通に考えると楽なブレスレットの方になるかもしれません。
しかしこのロードスターには、替えの革ベルトが付属していた筈です。
このブレスレットを修正しただけでは、また同じ問題が起きてしまいます。
オーナーさんからは特に言われてはいませんが、やはりここはケース一択です。
ブレスレットには手を付けずオリジナルのままになりますから、修理をしたかどうかもほとんど分かりません。

そして出来栄えはご覧の通り。
ケースとブレスレットの隙間も無く、ガタつくような事も無く、スムーズに取り外しも出来ます。
まぁ、これでオーナーさんに喜んでもらえれば、わたくしの苦労も報われるというものです。

ハイ、今回も良く出来ました!!

作業内容 : オーバーホール、ラグ修正加工、錆除去、洗浄クリーニング
交換部品 :  パッキン類
修理費用 : 40,000円(税別)