オメガ スピードマスター X-33 アナデジの針が動かないとのご相談です。

デジタルは作動していますが、アナログの針が止まったままです。(画像はデジタル表示offの状態)
時間合わせでも動きません。
こうなってしまうと、オーバーホールでのお預かりです。

裏蓋を開けてみるとケースに僅かな錆が出ています。

更に中蓋を取り外し、電池とその下に敷いてある絶縁シートを取り除くと…、

「アチャー!」
思わず声が出ちゃいました!

ほぼ一直線に付いたキズが、赤茶色のコイルに達しています。
コイルが断線していれば、もう時計は動きません。
恐らく電池を外す時に、ドライバーか何かでこじ開けて滑らせてしまったのでしょう。
初歩的な、そして致命的なミスです。
果たしてこれが原因でしょうか。

針、文字盤を外せば半分終わったようなもの…、

とは、そう上手くは事は運びませんね。
時針が付く筒車が抜けません。
て言うか、回りません。

左の歯車の上に、右へ順に重なって組み込まれていくわけですが、この4つが固着して取れませんでした。
なんとか上手く外れましたが、2番目には錆?4番目は変色が残っています。

錆、汚れをすっかり落としました。
色が元に戻ったのが分かると思います。
そして歯車も全てスムーズに回るようになりました。
後で伺いましたら、暫く仕舞いっぱなしになっていたそうです。
恐らく湿度の影響や入り込んだ湿気が原因のようですね。

ケース、裏蓋、竜頭は洗浄機でクリーニング、錆除去を施します。

ブレスレットもよく見てみると、汚れの他に錆が出ていました。
チタン製と言ってもやはり錆びる部分があるワケです。
クリーニングと錆除去を施します。

全体的に黒っぽかった色も元のチタンらしい色に戻りました。
おっと、バックル裏側に汚れが残っていましたね。
こうして画像を見れば一目瞭然。
この後しっかり落としましたのでご安心を。

先ほどの懸念のあったコイルは、導通反応がありましたので組み立てたところ、無事針は動き出しました。
針不動の原因は、輪列の固着によるものでした。

付いていたキズはそのままに…。
ちょっと心残りですが、仕方ありません。

裏蓋を閉めて完了です

水の無い宇宙空間を想定しているせいか知りませんが、どうやらこの地球上では湿度が大敵のスピードマスター X−33。
でも、そんな弱点にも目をつぶっていられるくらいの魅力が満載です。
トム・クルーズ主演の映画「マイノリティ・リポート」に登場して話題にもなりましたが、時計としての完成度を目指すというよりも、時計の可能性や近未来を夢見させてくれる、そんな稀有な物のひとつのような気がします。
作業内容 : オーバーホール、錆除去、洗浄クリーニング
交換部品 : パッキン類
修理費用 : 38,000円(税別)

暗闇ではインデックスバーと時分針の夜光で、時刻は判断出来ますが…、

バックライトを点灯すれば、クールなスカイブルーにデジタルが浮かび上がります。
もし宇宙空間で使用したらこんな感じなんでしょうかねぇ〜。
宇宙服の上から着けたX-33を手袋で操作している宇宙飛行士が目に浮かびます。
なんだか想像するとワクワクしちゃいます!?
わたくしお気に入りの一本ですかね!