ROLEX Ref.116234G バックル歪み修理  

ロレックス 現行デイトジャストです。
暫くすると止まってしまうのと、バックルが曲がっているのが気になるとのことでオーバーホールでのご依頼です。


経年の汚れが溜まっています。
精度を測ってみますと一日に10分以上の遅れが出ています。
だいぶ我慢されながらお使いになられていたのでしょうか。

 


一応バックルは締まりますが、明らかに歪んでいますね。

 


この様な場合の修理は、曲がってしまった部分を元に戻せばいいわけです。
が、問題はどこが曲がってしまったのか、ということです。
間違えて曲がっていない部分を曲げてしまうと、絶対きれいには仕上がりません。

 


いい感じに直りました。

 


実際は時計本体に取り付けてしまうと多少曲がっていてもよく判らないのですが、こうやって平らな場所に置いてみれば一目瞭然です。

 


現行モデルのブレスレットの駒は、5列共無垢になったので旧タイプのように隙間に汚れが溜まることはなくなりましたが、その分重くなってしまいました。

しかし、18 金製の最上位機種デイデイトと同じようなタイプのデザインのブレスレットは、バックルが目立たずワンランクも2ランクも高級感がアップしています。

このブレスレットのデザインだけでも、現行モデルは十分買いだとわたくしは思いますけどね。

 


ケース&裏蓋を洗浄機でクリーニングします。

 


ステンレスの輝きも蘇ります。

 


オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を締めて完了です。

 


世界中のビジネスマンが腕に着けているロレックスの定番、デイトジャスト。

同モデルの現在の定価は、1.026.000 円(税込)だそうです。

随分と高くはなりましたけど、その分ステータス性や時計の価値も上がっていますし、この先十年後、二十年後を考えても十分元は取れていることでしょうね。

 

作業内容 : オーバーホール、バックル修理、洗浄クリーニング

交換部品 : パッキン類

修理費用 : 28,000円(税別)

 

 

JACOB & CO. Five Time Zone PALATIAL FTZ 電池交換

新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて今年の一発目は、昨年の暮れギリギリにお持ち頂いた時計です。

ジェイコブ パレーシャル ファイブタイムゾーンの電池交換です。


裏蓋がネジ式のファイブタイムゾーンですね。

作業がラクになったかと思いきや、そのネジが1本抜けて有りません。

 


おまけに5個の内3個に液漏れ?

その電池も日本製が一個、スイス製が4個入っていました。
オーナーさんは初めての電池交換だそうですが、購入される以前に1個だけが交換されていたことがわかります。

幸い金色のマイナス(ー)端子が汚れているだけのようです。

 


裏蓋のネジは、大きめのネジを加工して合わせました。

端子の汚れ、ケースの汚れを拭き取り、裏蓋を閉めて完了です。

 


合わせのネジはステンレスそのままの色ですが、3本じゃぁちょっと心配ですもんね。

年末年始はお使いになりたいでしょうし、暮れのギリギリで時間も無い中で、まぁ、裏側ですし見えないですから、ね!

 


ところで今回、止まっていたのは真ん中の針だけでした。

ですが、液漏れは止まっていたムーブメントと稼働中のムーブメントの2つに起きていました。

電池が海外製だったということもありますが、仮に止まっていたムーブメントのみの電池交換で済ませていたら、次回の電池交換の際はこれ位では済まないかもしれませんね。

因みにわたくしは、余程の理由がない限り毎回5個共交換しています。

電池交換は、全部の電池を交換する。

その訳は、こういうところにあるんです。

 

作業内容 : 電池交換、ネジ合わせ

修理費用 : 8,000円(税別)

 

 

2018年、今年の一本!

さぁ、今年もいよいよ残り僅かとなってきましたね。

恒例となりました「今年の1本!」、ご紹介したいと思いま~す。

 


ピアジェの手巻きです。
時間が進んでしまうとのことでした。

18金のケースにシェル文字盤、周りにダイヤをパヴェセッティング。

そのどれもが、上品なジュエリーウォッチに仕上っています。

一見特に問題無さそうですが…、

 


そのどれも、問題大アリです!

まずは裏蓋のネジ。
4本のうち1本が無くなっています。

ネジ合わせ?それとも新規造りでしょうか?

 


更に開けてみますと、やっぱり!?

ハイ、ケースのダイヤです。
ダイヤは本物ですが、オリジナルではないようです。
ケースの裏から見ると開けてある穴が不規則です。
表から見た時にもダイヤの留め方がちょっと怪しかったので、そんな感じはしていました。
昔の時計は後付けダイヤが多かったですからね。

ん?、なんだかネジの太さが違う様な…。

 


そしてシェル文字盤。

今のシェル文字盤というのは、金属の板に薄いシェルを貼って強度を保っています。

ですがこちらは、厚みはありますがまんまシェル(母貝)の一枚板!

このままパチンって裏蓋閉めたら割れるかもです!

怖〜っ!!

割れたらアウトです。

昔の時計には、こういう芸術品のような時計を結構見掛けたんですけどね。
オニキスやらラピスラズリやら、ブラックオパールもありました。
(そして当時の定価はメチャクチャ高かった。)

 


で、先ほどのネジですが左側2本は同じ太さですが、右側の1本は細いです。
しかもネジの無かったネジ穴には、どのネジも緩くてちゃんと締まりません。
コリャ参った!?

更によく見てみると同じ2本のネジは後から合わせた物のようで、どうもどのネジ穴にも合っていないんですね。
そして細いネジが元からのネジのようですが、それも摩耗が進んでいます。

18金はステンレスより柔らかい為、繰り返し使用することで摩耗したりうっかり斜めに締めたりするとネジ山が潰れてしまい、締まらなくなってしまうと交換するしかありません。

他のネジで合わせてピッタリ同じなんていうのはそう滅多にあるわけでは無く(そもそも合わせるネジを探すこと自体が一苦労)、ネジ部分の太さ、長さ、そしてドライバーを当てる頭のサイズが合っていないとしっかりと締まりません。

ネジと言えども他の部品と同様、その時計専用なんです。

補修用に僅かなサイズ違いをストックしている希少なメーカーもありますが、そうでなければ新規にサイズを合わせて造るしかありません。
前の職人さんも合わせるのに苦労したんじゃあないでしょうか。

たかがネジ、されどネジ…。

ネジ合わせ、奥が深いんです。

 

そしてケース&裏蓋を、いつものように洗浄機でクリーニング、が…、

 


ダイヤの石落ちです。

メーカー純正ではまずあり得ませんが、後付けですからね〜。
止め直せばモンダイナイ、モンダイナーイ!

 


で、ひとつ止め直したら、2つ取れました!?
さすがにガックリ…。

モンダイナクナーイ!

 


原因は、メレダイヤのサイズが下穴に合っておらず小さ過ぎたせいでした。
直径0.74mmから0.84mmのダイヤに交換です。

もう落ちないで下さいネ!

 


18金のヤケ(変色)もきれいに落とします。

 


ネジは左側の1本が0.8mm、右側の3本が0:7mmで計4本何とか合わせで交換。

シェル文字盤にはガタつき防止、衝撃吸収にクッションを入れました。
針の曇りも取り除きスッキリしました。

オーバーホールの済んだムーブメントをセッティング、ケースに収めて無事完了です

 


コチラの時計、病で入院中だったお祖母様から病室で手渡され、オーナーさんが譲り受けられたそうです。

シェル文字盤がとっても可愛くて、いつかは自分にと思い続けていたそうです。

残念ながら時計は形見となってしまったそうですが、そんな出来事も何故か笑顔で話されていたのがとても印象的でした。

きっと時計はお守り替わりになるくらい、お祖母様とは心が通じ合っていらっしゃったからなのでしょう。

ひとつのものが受け継がれていく、しかもそれはこれからまた何十年も動き続けていく。
きっとお二人の想い出と共に。

そう思ったら「ハイ、オーバーホールだけで」というわけにはなかなかいかないんですよね。

だからどうしてもひとつひとつに時間が必要なんです。

 

今年も一年お付き合いありがとうございました。

来年も皆様にとってより素晴らしい一年になりますように…。

 

 

 ウォッチ&ジュエリーカエラ  野口伸一

※新年は1月5日(土)、6日(日)は営業、7日(月)〜9日(水)は休業、1月10日(木)から通常営業になります。