タグホイヤー WL5110 の自動巻きの稼動時間が短くなってきたとのことで、オーバーホールでお預かりです。
裏蓋を開けてみましたところ、錆やムーブメントも特に目立った汚れは無く、油の劣化が原因のようですが…。
しかし問題は、別のところにあったりするわけです。
例えば針。
恐らくは経年劣化による夜光のひび割れ(黄色矢印)、剥がれ(黄色丸印)が起きています。
いずれ落としたりぶつけたり衝撃で夜光が落ちてしまうと、機械の中に入り込んでしまう危険性があります。
そして、竜頭です。
防水時計のキモでもあるねじ込み式の竜頭は、ネジ山の摩耗や汚れの蓄積等によりねじ込んでも閉まり難くなってきます。
コチラの時計も閉まりが甘く、竜頭をねじ込む回転数が少ないようです。
汚れを落としてみると、更に少なくなったような感じもします。
竜頭交換だけでは済まなさそうでね。
少し時間が掛かりましたが竜頭が入荷しました。
コチラの竜頭(右側)は純正タイプになりますが、形、サイズ、仕様はほぼ同じ(左側が元の竜頭)。
タグホイヤーの竜頭はモデルごとに微妙に違ったりして、多数の種類がありますので、合うか合わないかは各サイズを測って実際に取り付けてみないとぴったり合いません。
因みに竜頭を一杯にねじ込んで閉まった状態から戻すように回すと、半回転ほどで竜頭が抜けてしまいます。
どのくらいかと言うと…、
このくらい ⁉
新しい竜頭に交換しただけですと、
このくらい。
竜頭とケースの間の隙間が少ないのは、ねじ込む回転数が少ないからですね。
これでは再修理もおそらく時間の問題です。
で、竜頭とチューブをセットで交換です。
と、言われて見てもよく分かりませんよね。
幾らか新しくなったくらいでしょうか、ネジ山は内側ですから見えませんし。
オーバーホールが済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を閉めて完了です。
そして、交換後の竜頭とチューブのかみ合いは、この位からになりました。
ここからねじ込んで、しっかり竜頭が3回転以上回せます。
これなら安心、ですね。
防水検査も10気圧OKです。
ねじ込み式竜頭の交換時期はというと、閉まった状態から竜頭のねじ込みが外れるまでが1回転半未満が目安でしょうか。
1回転回らないようですと、ちょっと危なくなってきます。
パッキンが入っていれば一応閉まればいいじゃんと、思われるかもしれませんが、あまりギリギリでお使いになっていますと、ある日突然閉まらなくなってしまいます。
それにそういう状態ですと、大体パッキンも寿命が来ていますから、既に湿気や汗が入り込んでいる、錆が発生する、針も曇りが出てくる、で修理代が高くつく、の良いことなしです。
特にチューブ交換までいってしまうと、時計によっては結構な金額が掛かってしまう場合もあります。
もし竜頭回しに異常を感じたら、早めのご相談をお勧めします。
作業内容 : オーバーホール、チューブ抜き取付加工、三針夜光入れ、ブレス修正、バックル調整、洗浄クリーニング
交換部品 : 竜頭、チューブ、巻真、内装ネジ、パッキン類
修理費用 : 47,300円(税込)