KING SEIKO カレンダー早送り不良修理

56キングセイコーのメンテオーバーホールのご依頼です。

前回オーバーホールをされてから30年位経っており、遅れるようになってきたとのことです。
裏蓋に「92.11.··0」の記入がありますが、多分92年11月にオーバーホールをされたのでしょうね。
それから29年目ですか…。(2020年にお預かり)
約30年、す、すごい記憶力ですねぇ!
しかもお祖父様の時計だったのに!

ところがどうもカレンダーの早送りが出来ません。
針回しではカレンダーは切り替わりますので使えなくはないのですが、カレンダー合わせとなると日にち分の針を回さなければならず大変です。

恐らく56系の定番故障でもあるカレンダー送りのレバーに問題がありそうです。
ですが問題は部品が入手出来るかどうかです。
何せ古いもんですからねぇ〜。

ケース、竜頭周りに汚れ、錆が見られますが…、

やっぱりです。
ガラスを押さえているベゼルを外してみるとご覧の通り!
錆は見えないところに出ているものです。

洗浄機でクリーニング、錆除去を施します。

多少サビ跡が残りましたが、30年ぶりですからねぇ〜。

で、これが問題のカレンダー送りレバー(揺動レバー)。
故障の原因は、このカレンダー盤を送るレバーの先の爪が破損したことによるものでした。
右側が元のパーツで、黒いプラスチック製の爪の根元部分が割れています(黄色矢印)。
耐久性に問題があったのか、やはりカレンダー不良の修理が多かったんでしょう。
その後メーカーさんも対策部品へと変更しています。

そして左側がその対策後のパーツ。
爪が金属製に変更されています。
勿論、交換部品は対策後のタイプですよ。

オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を締めて完了です。

よかったですね〜。
心配だった部品も無事入手出来ました。
でも、いつかは無くなってしまうんでしょうかね。
部品が有れば修理はなんとかなるものですが…。

ところで今、世の中はユーズドや古いものが大人気。
モノを大切に長く使っていく流れに向かっているようですから、そうなると修理はそのキモになってくる筈です。
最近では一部の国内自動車メーカーが、30年前の旧型人気車種の純正補修部品を復刻生産し始めたりしていますね。
新しいモノを作り続けるだけでは、いずれ立ち行かなくなってくるのかもしれません。
長く安心して使い続けられることがそのブランドの価値を高めてくれることは、スイスブランドが証明しています。
コチラのキングセイコーやグランドセイコーやら日本ブランドも、国内だけでなく海外でも十分人気もあるようですしねぇ〜。

日本のメーカーさんにも是非頑張ってもらいたいものです。

作業内容 : オーバーホール、錆除去、洗浄クリーニング
交換部品 : 揺動レバー、パッキン類
修理費用 : 45,650円(税込)