送りでの修理について EBEL CLASSIC オーバーホール

エベル クラシック レディスのオーバーホールです。
このエベルも、ウチではよくご修理依頼の多い時計ですかね。
前回のエベルの記事から随分と経っていましたので、久しぶりにご紹介してみます。

チューブの根元に錆が出ています。
また18金の竜頭にも錆が付着しています。

金色のベゼル、ネジも18金ですが、変色、錆が付着しています。
18金は錆びませんので、汚れのように落とせます。

ところが、ここで問題発生。

なんとチューブに亀裂が入っています。
ステンレスに亀裂が入るだなんて、錆のせい?経年劣化?

パイプの内側にも。

洗浄機でクリーニング、錆除去、金の焼け(変色)を落とします。
チューブと共に竜頭のパッキンも交換です。

オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、ベゼルを取り付けて完了です。

今回のオーナーさん、お嬢様とご一緒に電池交換でのご来店でしたが時計の状態からオーバーホールでのお預かりに。
ただちょっと遠方からとのことでしたので、今回お渡しは送らせていただくことになりました。

これまでご修理を承る場合には、ご来店いただいてのお預かり、お渡しとさせていただいておりました。
何故かといいますと実際にお話を伺いご説明することで、顔の見える、安心して修理を任せてもらえる対応を目指していたからです。
それは、よく知らないところに時計を送るのはちょっと心配だとか、直に時計職人に見てもらいたいですとか、電話での応対が不親切で先にお金と時計を一緒に送れば安く出来るなんて何だか怪しいだとか、そういう話をお客様からよく伺っていましたから。

が、しかし…、
そんな事情もこの新型コロナウイルスの影響で変わってしまいそうです。
どんな商売でもそうだと思うのですが、対面での接客応対に支障が出てきたわけです。
なので、まぁ、ウチでも限定的だった配送での修理対応も、オーバーホールのご修理に限り正式に取り入れていくことになりました。
もちろんご来店いただくのと変わりない安心感を目指して参りますので、コチラの方もどうぞよろしくお願いいたします。

そして長期戦になるかもしれないこのコロナ禍、どうも今までのやり方、考え方が、社会が大きく変わる節目になりそうな気がしてきました。

作業内容 : オーバーホール、チューブ交換、竜頭パッキン交換、錆除去、洗浄クリーニング
交換部品 : チューブ、パッキン類
修理費用 : 33,000円(税別)

5月休業予定日のお知らせ

5月の休業予定日は、東京都感染拡大防止協力要請の延長に従い5月1日から31日(日曜日)まで臨時休業とさせていただきます。
今後の情勢次第では変更となる場合があります。
尚、臨時休業の間は配送でのご修理依頼を承っておりますので、どうぞこちらをご利用下さいませ。
また出来上がり品のお渡しに関しましても出来るだけ対応させていただきますのでご相談下さい。
詳しくはお電話か【★お問い合わせ】よりお問い合わせをお願いいたします。
ご不便をお掛けしますが、よろしくお願いいたします。

お電話で 03-3464-5757

【5月の休業予定日】
 1日(金曜日)~31日(日曜日)

※右上又は下方の【営業日カレンダー】でもご確認頂けます。

Cartier Roadstar ラグ加工修理

たま〜に、外科手術の必要な時計が入院してきます。
今回はカルティエ ロードスター メンズのブレスレットが取付け出来なくなってしまったので修理可能かどうか、とのご依頼です。

カルティエのロードスターは、ご自分で簡単にベルト交換が出来る優れものの時計です。
しかし、今回のオーナーさんの場合、逆にそれが仇となってしまいました。
うっかりベルトが外れて時計を落としてしまったそうです。

差し込んでもこれ以上入りません。

ケース本体から伸びたベルトを取り付ける4本の足を、ラグと言います。
その本体12時側のラグの向かって右側が、内側に曲がっています。
よく見るとラグには落とされた時のキズが付いています。
こんなにガッシリした硬いステンレスのラグでも、方向や当たりどころが悪いと曲がってしまうんです。
特に最近の時計は重たいですから尚更です。

ロードスターはバラしますとほぼ何処かしらに錆が発生していますね。

ケース、ベゼル、裏蓋、ネジを洗浄機でクリーニング、錆除去を施します。

汚れが落ちてスッキリしました。
錆もきれいに取れました。

そして修正後はこんな感じに仕上がりました。
それでも1mm弱位ですかねぇ、削ったのは。

しっかり収まりましたね。
実は今回特に注意したのがブレスレットを差し込む溝。
ラグが曲がったことでこの差し込む溝まで歪んでいました。

ココは左右対称でないと当然ブレスレットは入りません。
削る作業というのは削り過ぎたらもう元には戻せませんから、それはもう微調整、微調整の繰り返しで削っていきます。

目立った表側の錆もきれいに落ちました。

オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、裏蓋を閉じて完了です。

他店さんで断られ、途方に暮れていたオーナーさん、そりゃそうですよね。
こういった修理においては曲がったら元に戻せれば良いのですが、こんなにガッシリしたラグを戻すのは容易ではありませんし、下手をすると強度の弱い部分に歪みやしわ寄せがいってしまいます。
そうなると削って合わせることになる訳ですが、問題はどちらを削るかです。
ケース本体かブレスレットか。
普通に考えると楽なブレスレットの方になるかもしれません。
しかしこのロードスターには、替えの革ベルトが付属していた筈です。
このブレスレットを修正しただけでは、また同じ問題が起きてしまいます。
オーナーさんからは特に言われてはいませんが、やはりここはケース一択です。
ブレスレットには手を付けずオリジナルのままになりますから、修理をしたかどうかもほとんど分かりません。

そして出来栄えはご覧の通り。
ケースとブレスレットの隙間も無く、ガタつくような事も無く、スムーズに取り外しも出来ます。
まぁ、これでオーナーさんに喜んでもらえれば、わたくしの苦労も報われるというものです。

ハイ、今回も良く出来ました!!

作業内容 : オーバーホール、ラグ修正加工、錆除去、洗浄クリーニング
交換部品 :  パッキン類
修理費用 : 40,000円(税別)