KING SEIKO DAYDATE オーバーホール

キングセイコー デイデイトのオーバーホールのご依頼です。

ネットオークションで落札した時計とのことですが、一筋縄ではいかないのがこの手のご修理です。
一応動いてはいますし、汚れているだけなら良いのですが…。
 
 

裏蓋はケースと一体式で完全シールドされて開きません。
以前は防水性を追求してこういった構造が採用されたりしていましたが、今は加工技術が進歩してほとんど見かけなくなりました。
 
 

ムーブメントは表側ガラスを外して取り出します。
が、ケースの外側ベゼル下はともかく、内側のガラスパッキン下までも錆が拡がっています。
まぁこれくらいは想定内ですが…、
 
 

しかしムーブメント自体にも腐食と錆が!
ちょっとヤバいかも!?
巻真挿入口の錆からすると、どうやら竜頭から水が入り込んだようですね。
竜頭のパッキンは硬化して全く効いていません。
 
 

ケース、ベゼル、竜頭は洗浄機でクリーニング、錆び除去を施します。
 
 

ある意味、運?ですかねぇ。
開けてみないと判らない部分ですし、錆びを落とした跡に腐食が残ってしまうかどうかも。
腐食跡が大きいと防水性が大幅に低下してしまいますので。
それに古い時計での専用パッキンは、再利用出来なかったりするとほぼ部品無いですから、それだけでアウトです。
(まぁアンティークでしたら、ほぼ非防水と思ったほうが間違いないですけどね。)
 
 

普通錆びた部品に関しては交換です。
しかし部品調達もままならない場合は、ひとつずつ落としていくしかありません。
もう我慢比べのようなものです。
それでも出来る限りですけどね。
 
 

オーバーホールの済んだムーブメントをケースにセッティング、ガラス、ベゼルを取り付けて完了です。
どうやらコチラのオーナーさん、運が良かったみたいですね。
 
 

既に生産の終了した時計や新品より割安なユーズドウォッチの需要は益々高まっているようです。
そういった時計を手に入れるには、ユーズド専門店で購入するのが間違いないわけですが、近年ネットオークションで手に入れる方も多いのでしょう。
このごろのユーズドウォッチ高騰で以前のように安くはなかなか入手出来なくなってきましたが、それでもショップで購入するより安価で入手可能ですから、もし気に入った時計が見つかったら挑戦してみるのも良いですね。
ある程度オークションでの落札相場を掴んでおけば、楽しい買い物になるでしょう。
落札出来た時の充実感は何とも言えないものがありますからね。
 
ですがそこで問題になってくるのがその時計の本当の状態です。
掲載された時計の画像と説明文を何度も見返して決めた訳ですが、落札出来ても実物を手にするまではやはり不安なものです。
中には素っ気ない説明で不親切な出品者さんも見られますし、素人の様な振りをしてごまかしたり、オークション独特の表現には注意が必要です。
特に高額な時計に関しては、やはり止めておいたほうが無難かもしれません。
 
そしてコチラのオーナーさんのように初めから修理費用を計算に入れておけば、長く使い続けるつもりなら一番安心ですかね。
もし修理に出される場合には、オークションで落札した時計である旨を一言伝えておけば見積りや修理の際にも対応し易いかと思います。
 

作業内容 : オーバーホール、錆除去、洗浄クリーニング
交換部品 : パッキン類
修理費用 : 35,000円(税別)